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気まぐれエッセイ

■恩師について

我が人生で、恩師がありがたいことにも二人いる。
一人がフラメンコ舞踊家の岡田昌巳先生。そしてもう一人がバレエの指導者である千葉千香先生だ。
私の人生に大きくかかわり、そして今に至ることが出来たのは、この二人の恩師のお陰だと思っている。
今回はバレエの恩師である千葉千香先生について書きたいと思う。

先生との付き合いは28年にもなる。私の舞台は今日まで全て見ていただいているし、先週千葉先生の
バレエ発表会にフラメンコ舞踊家として出演させていただいた。私のソロの踊りと、私が創作した作品に
バレエの人達も入って、バレエのパートは千葉先生に振付けていただいて、フラメンコとの
コラボレーション作品をやらせていただいた。 千葉先生は「瀕死の白鳥」を踊られた。

最初にバレエの千葉千香先生にお会いしたのは、1981年あたりだと思う。
私が日女体の舞踊科にいた時に、ミュンヘンオリンピックの器械体操、男子鉄棒競技で金メダルを取った
塚原光男さんが、朝日生命提供の朝のテレビ体操番組(NHKの朝の体操番組に対抗して)の出演者を
探していて、日女体にいらした。それで私と友人2人の、計3人の出演が決まった。(なつかしいなぁ〜)

その流れがあり、そして私がピアノを弾けることを塚原さんが耳にして、朝日生命体操クラブの女子の
床運動のピアノ伴奏を頼まれた。(朝日生命体操クラブは器械体操の世界では今現在でも日本一強い)
話がそれるけど、今の女子床運動は全て録音された音楽を流すけど(コマネチの時代あたりから、
録音された曲を使うようになってきたと記憶している)、昔は必ず「生のピアノ演奏」がついた。
体操選手の動きにピッタリと合わせてピアノを弾かないといけないので、一瞬たりとも鍵盤を見れない。
ピアノも難曲だし、弾く技術も必要だし、選手の動きも知らないといけないので、弾く時はかなり緊張した。
その後、私はピアノの伴奏から、今度は体操クラブに来ている子供たちの体操指導のお手伝いをした。

その頃、私は佐藤桂子、山崎泰先生のフラメンコ舞踊団に所属していたのだけど、踊りの技術が全くなく、
ターンをクルクル回れる人なんかこの世の人間じゃないと思っていたし、フラメンコの意味も全く
知らなかったし、超簡単サパテアードだって筋肉がバリバリになってたし、あまりにも無知で何も出来ない
自分に恥ずかしい思いをしながらフラメンコスタジオに通っていた。
そんな時、朝日生命体操クラブのコーチの二人が、クラブの中にあった婦人体操教室の生徒の中に
東京バレエ団を退団して数年経つ千葉千香さんという(バレエ団時代は安井千香さん)素晴らしい
バレリーナがいるらしい、との情報をキャッチ。私も加わって3人のプライベートバレエクラスを何とかして
設けてもらえるよう願い倒して、ついに千葉先生のバレエ教室が始まった。

千葉先生のレッスンは本当に本当に本当に厳しかった。私たちのようなド素人にも、本物の一流のバレエの
基本を教えてくださった。だからちょっとの甘えやミスも、すごくすごくすご〜〜く厳しく注意された。
その時代は、私はスペインに行く事も、フラメンコで生きていくなんて事も微塵にも考えてなかったけど
千葉先生が命を懸けて築き上げてきたバレエを、こんなド素人にも全身全霊で教えてくださるその心と姿勢に
強く心を動かされ、こちらも全力で答えたい!という気持ちだけで歯を食いしばってついていった。

そして時には、「先生、お願いですからそんなに大切な事をこんな私たちに教えないでください。
貴重な宝物を私たちに教え過ぎで、あまりにももったいないです!」と何度もお願いした事があった。
それほど、千葉先生は彼女が血と涙と努力で長年つちかってきたもの全てを私達に惜しげもなく
教えてくださった。本当に、1から1000まで教えてくださった。

だけど、、、何としてもバレエの基本=舞踊の基本を身に付けたい!とは願い倒しながらも、
現実はあまりにも厳しかった。涙。。。
だって、バレエのような完璧な技術が絶対である舞踊の世界は、身体が自由自在になるチビッ子の
時代からやってないと、出来上がってしまった化石のような骨を持つ大人になってからバレリーナのような
完璧な基本を身に付けて踊るなんて不可能だ。
その上、私はバレエや他のジャンルの踊りを見るのが大大大好きで、世界的に優れた作品や舞踊家の
ビデオなど日々狂ったように見まくっていたので、「目の知識」だけは恐ろしく超えていた(と思う)。
だからこそ、頭の中では超一流の基準を視覚的に知っていて、でも現実の自分の身体は地の底に落ちる位
ヒドイものなので、そのジレンマに挟まれて、登校拒否じゃないけどスタジオ拒否になってしまうくらいだった。
でもそこは、生まれながらの超マジメ気質なワタシ。舞踊の基本を身につける為には何としても
喰らいついていく!と、自分のお尻をひっぱたいて、スタジオ登校拒否・超ネクラの状態で
週3回のバレエのレッスンに休まず約7年通い詰めた。

それと、レッスン以外で千葉先生が現役だった頃の苦労話や舞台の話を聞くのが死ぬほど好きで、
先生の一つ一つの思い出話が、何かを求めていた私の心に刺さるように残っていった。
28年経った今でもレッスンでのお言葉、色々なお話を全てハッキリと覚えている。

千葉先生の教えを受けて、私もいつの日か指導する立場になることがあったら、先生と同じように、
自分が築き上げたもの全てを生徒に教えよう!全身全霊で教えよう!諦めないで必ず伸びていく事を
信じて指導しよう!という気持ちが、先生と触れていく中で自然と私の心に刻まれていったし、
先生のような「本物の指導をする立場の精神」を絶対に引き継ぎたいと心から思った。

こうして千葉先生から舞踊の基本を徹底的に学んで(スペインに行くまで必死に頑張ったけど、
本当に難しかったので、点数で言えば70点くらいしか出来なかった)、私はスペインに渡った。
岡田昌巳先生と千葉先生の両者に徹底的に叩き込まれた基本は、スペインのフラメンコを学ぶのに、
もの凄く強く、そしてありがたい武器となった。
レッスン中、「あ〜基本をしっかり学んでおいてよかったぁ!」と何百回思ったことか!
自分にまだまだフラメンコ性がないとわかっていたけど、技術的にはほぼ何でも完璧近く出来たし、
そのお陰でむこうのアーティスト達に目を掛けてもらえたし、様々なチャンスもかなりもらえた。
そして「AMI esta muy preparada 」(アミは準備万端だ)とよくみんなに言われていた。
こうして早く外枠が出来たので、核となる一番重要な”フラメンコとは?”に重点をおいて勉強する
年月が過ぎた。この答えだけは基本技術獲得の年数の何倍も時間がかかってしまったけど。。。

私は日本とスペインを行き来していたので、千葉先生にお会いするチャンスが多かったのだが、
そんなある日、先生のバレエクラスの見学に行って、昔の先生とかなり違う教え方に驚いてしまった。
もちろん前と同じようにキチンと教えてくださるのだが、柔らかい、というか甘いというか。。。

いったいどーーーしちゃったんですか?!と聞くと、先生がこんな事をおっしゃった。
「今の時代の生徒は、アツコ(私のこと)を教えていた時と同じように教えるとみ〜〜んなやめちゃうの。
ちょっと注意されただけで、”怒られた”とか”傷ついた”とか言ってやめて、何でも褒めてくれる先生の所に
行っちゃうのよ」って。
だから、よっぽどヘンな事や間違った事をしない限り、前みたいに徹底して言わないようにしないと、
生徒が簡単にやめてしまうとのことで、それで先生は長年苦悩して、結局今の方法を選んだ、とおっしゃった。

この話は、指導する立場になっちゃった今、毎日のように思い出しては考えてしまう。
習う側としては、注意されて毎回うるさいな、と思うかもしれないけど、生徒が出来ない部分、
間違えてやってしまっている部分などを、毎回毎月毎年注意し続けるのは、本当に本当に
ほんと〜〜にエネルギーが必要なのだ。「怒っている」のではなく、悪い箇所をなくしてその生徒が
良くなる為に必死に「注意している」のだ。これは生徒に対する愛情がないと絶対に、絶対にできない。
生徒がわかるまで、納得して、身体が覚えるまで、こちらが根気よく、相手の聞き具合、受け入れ態勢が
出来ている時を毎回考え選びながら、少なくとも私は1000回の注意はする。
すぐに直せる生徒はいいのだけど、人それぞれ許容量が違うので、わからない人はオーバーでなく
1000回言わないとわかってくれない。

そして、フラメンコのように音とリズムに対する注意が多い場合は、ずれた”その瞬間”に注意しないと
いけない場合が多いので、ついつい熱くなってしまって大声を張り上げてしまう。
それを、ヒステリーと捉えられたら仕方ないけど、でもやっちゃいけない事、間違った事に対して
緩慢な教えをするのは、指導者として、そして何よりも崇高なフラメンコに対して大変失礼なことを
していると私は思ってしまう。正しいフラメンコを伝えるため、そして自分を慕って通ってくれる生徒の為に、
少しでも成長できるように、教える側の先生としては、毎回必死に声を枯らし、身を粉にしているのだ。

千葉先生はこのように、先生の感情で怒られていると思ってしまう生徒、細かく言わないですぐに
褒めてほしい生徒、すぐに答えを欲しい生徒など、つまり「今の時代の人間」に悩まされ、
辛い思いをした結果、別の方法を選んだんだろうと思う。

私もこういった時代の変化に悩み、考えさせられる毎日だけど、今の時代の人達にも受け入れてもらえるよう    柔軟な姿勢で、プロアマ関係なく真剣に勉強したい生徒に、フラメンコで得る幸せを感じてもらえるよう、そして    フラメンコが人生での何らかの励みになってもらえるよう、千葉先生から学んだ財産を大切に伝えていきたい。

千葉先生にめぐり会えたからこそ今の自分がある。そして大切な心の財産を山のようにいただきました。
このご恩は一生忘れません。先生、いつもいつも心から感謝の気持ちでいっぱいなんですよ。

        ありがとうございました。そしてこれからも続けてよろしくお願いします。

 

                                                        2008年7月2日
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