雑記帖 2005年5月4日

ミモザの贈り物

春を心待ちにしていたある日、ミモザを抱えて恋人がたずねて来ました。
「ミモザ」 シャンソンの歌詞にはよく登場する花です。
「今年は 庭のミモザがたくさん花をつけたんだ・・ 急にケイコの唄っているバルバラ(ライブハウスの名前)に生けたくなって・・・」
と両腕にあふれんばかりにミモザを抱えて 私のぼろアパートをノックした彼。なぜってチャイムの故障中。
こんな恋人がいたらいい? やはり私はキザな男はあまり好きではありません。

実は恋人といったのは、飯島文子さん。 昨年の博品館リサイタルで舞台美術を担当してくれた女性です。
ハートのとても暖かい友人です。 公演履歴に彼女の作品(雲龍柳のオブジェ写真)があるので、是非見てくださいね。
飯島さんは、痩身で色白、知性的な女性です。
「はないけ」のような力仕事 はたして大丈夫なのかと不安になってしまうような 繊細タイプ?に一見見える。

ところが、人はみかけによらなしものです。(横道にそれますが、私もよくそう言われます。その実体はいつかお話しましょう。)
昨年、雲龍柳を舞台に設置してもらった時、彼女のエネルギーに圧倒されそうでした。
「はないけ」に賭ける情熱に、愛情に、また仕事に対するその真摯な姿勢に こちらが励まされるほど。もつべきものはこういった友人。
キザな恋人は面倒なだけです、念のため。

「花のこと」はまったく素人のわたし。 長持ちさせるために前日から水揚げしなければいけない、
あるいは、 ミモザの葉っぱを全部カットすると 黄金のイメージになることなど教えていただきました。
飯島さんが心を込めていけてくれたものです。 私のお喋りより 写真をご覧くださいね。


さて、春爛漫のイメージと言えば、我が日本国では桜。
我が家のそばに観音院というお寺があります。
お寺の白壁は たいして長くありませんが、毎年春になるとソメイヨシノがいっせいに咲いてぼうっと明るくなり、
これがまさしく「花あかり」ねぇ、 昔の人は なんて繊細で素敵な言葉を考えだしたのかしら、ああ、日本人に生まれて幸せ!
などと ちょっとばかり、誇らしげに(単純な私です) 白壁のそばを通る楽しみが増えます。  

今年は春の訪れが、少し遅れました。 その分、桜の開花を心待ちにしていました。 春よ、来い!こんな気持ちになったのも数年ぶり。
そして、数日前にやっと2,3分咲きになり 上を向いてあるく回数も増えていたこの頃。 今年は例年より花の見ごろが長そうで嬉しいなぁ
と思っていた矢先、 突然、季節はずれの陽気です。 25度にもなり、 なんと、いっきに満開になってしまったのです。
花に嵐ならぬ、やけ火箸?です。 桜にむごい仕打ちです。 やはり、温暖化は進んでいるんですね。
今日あたり、「花冷え」になればいいのに・・・ とこちらの願いもむなしく、また夏日。 その上、風も強そう。
いっきに散ってしまうでしょうね。 可哀想に。 情緒も何もありません。

この冬は、久しぶりに冬らしい冬で、ほっとしていたのに。
私はとっても寒がりなくせに冬が子供の頃から大好きなんです。
冷気がぴんと張り詰めた明け方とか、群青色の冬空でチカチカ輝いている星くずとか、 葉をすっかり落とした冬木立・・など
でも、もうこの温暖化現象は止まりそうもありません。 総論賛成でも、いざ我が身に降りかかると、楽で便利な方がいいにきまってます。
また、昔の不便な生活なんか絶対に戻れない。 不便から便利、 貧乏から金持ち という右上がりの図式はOKでも 
人間ってその逆を 自ら進んでやるとは思えない。
個人的にはもちろん、国単位でもそうでしょう。 京都議定書だって米国は不参加ですから。 
その上、発展途上国は途上国で「先進国は良い思いをしたからいいかもしれないが、まだこちらはこれからです。割が合いません」と言う。
人類滅亡の危機が 足元に迫らないと一つにまとまれない、でもその時にはもう遅い! ゆで蛙状態です。

でも、私は自慢じゃありませんが、今日まで、夏は扇風機に団扇だけ、冬はエアコンなしの暮らしです。
真冬など、吐く息が白くなります。 外で・・ではなく家の中で、です。
人工的に作り出された、暖かさ、涼しさは 空気がおいしくないからです。 外出したら、この排気ガスの満ち満ちている都会で、
自然の空気など望むべくもありません。 せめてせめて 我が家の中だけでもと実行中なのですが。
昨年の暑さには、さすがの私も これまでか〜と白旗をあげそうになりました。
暑さにはからっきし弱いのです。 花ならさしずめ「しおれ花」という状態になってしまいます。 

「おいおい、いくらなんでも、 ちょっと花に例えるのはずうずうしいんじゃない!」

これからは、人間も暑さに強い遺伝子を持った人だけが子孫を残していくのでしょう。
私は淘汰される種です。 さ よ う な ら

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